vol.80 スペックの基準

こんにちは。
お家づくりコラム、本日のテーマは「スペックの基準」です。

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脱炭素の流れに伴い、
住宅の高性能化が著しく進んできたここ数年ですが、
正味の話、若干行き過ぎた感が否めないなと感じている方も
少なくないのではないでしょうか。

また、どこに行っても性能の話をされるものの、
どこも同じような話ばかりだし、
その違いもイマイチ理解出来ないため
その説明にうんざりしている方も
少なくないのではないでしょうか。

というわけで、
今回は業界の中で加熱し過ぎている
「オーバースペック(過剰性能)」
についてお伝えしていきたいと思います。

要は、お施主さんが最高の形で暮らせるぐらいの
ハイスペック(高性能)を備えておくのは
プロとして当たり前のことですが、
それを超えた「オーバースペック」は、
不要だと言っても過言ではないかと思います。
その理由についてお伝えしていきたいと思います。

✔️オーバースペックとは?

ウィキペディア曰く、
「オーバースペック(過剰性能)」とは、
利用者が求めるよりもさらに高く持っている性能と、
その性能を持つ機械の総称ですが、
過剰という言葉が指し示す通り
利用者にとっては不要なものだし、
多くの場合「宝の持ち腐れ」になってしまっていると思います。

例えばある地域では、
「UA値0.87」という数値さえクリアしていれば
最高クラスの断熱性能を備えているし、
あるいは「0.6」という数値をクリアしていれば、
ZEH基準すらもクリアしていて
超快適に暮らしていけるにも関わらず、
なぜかその遥か上を行く北海道級の数値を標準にするという
謎の快適性の追求だったり...。
なのに、空気の循環を遮る「廊下」を大量につくるという
矛盾だらけの提案をする住宅会社だったり...。

この2つの要素を兼ね備えているだけで、
100万円〜200万円はコストの無駄を
叩き出しているのではないでしょうか。

この他、200万円〜300万円ほどする全館空調システムなんかも
体感したら「これ欲しいー!!」となりやすいアイテムですが、
これだって確実に製品寿命がやってくるので、
後々のメンテナンスコストまで踏まえると
かなり大きな負担増になるのではないでしょうか。

そんなわけで、
住む人のためにというよりは
むしろ他社との差別化のためだけに、
お施主さんが負担するコストを犠牲にしてまで
「自社の強み」を作り出すのは間違った考え方ではないか
と思っている次第であります。

現在は、木材をはじめとした原材料費の高騰によって
かなり負担増になっているので、
本来私たちはコストを抑える工夫や提案をすべきですからね。

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✔️活かすも殺すも間取り次第

私たち住宅会社は、
お施主さんが最高の状態で暮らせるように
ハイスペックを備えておく必要はありますが、
コストを犠牲にして
それ以上の「オーバー(過剰)スペック」を備えるのではなく、
そのハイスペックを活かす間取りを
考えることが大切ではないでしょうか。

「制震ダンパー」については、
平屋にすれば設置する必要すらありません。
また、平屋にしつつ空気を遮断する廊下をなくせば、
体積も小さくなり冷暖房効率が格段に高くなるので、
過剰な数値を追いかける必要もありません。
かつ、平屋にすれば階段による
上下階の温度差が生まれなくなるので、
全館空調システムだって必要なくなります。

つまり、間取りによって
暮らしの中で起こる問題を解決することさえ出来れば、
不用意にコストを上げることなく
最上級に暮らしやすい住まいを提供することが出来るというわけですね。

なので、オーバースペック(過剰性能)は
確かに魅力的に感じるかもしれませんが、
それは確実にコストに跳ね返るということ、
そして、そんなことをしなくてもいい間取りさえ出来れば、
一般的なハイスペック(高性能)住宅で
充分過ぎるぐらいだということを
覚えておいていただけたらと思います。

それでは、また次回。

vol.79 家づくりにも必要な2つの視点

こんにちは。
お家づくりコラム、本日のテーマは「家づくりにも必要な2つの視点」です。

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家づくりをしていく過程では、
予算のこと、土地のこと、家のことで
数多くの意思決定が必要となるのですが、
意思決定で大切なことが
出来るだけ合理的で冷静な判断をすることです。

つまり勢いやその時の感情に任せて
意思決定をするのではなく、
常に自分の感情と一定の距離感を
持つことが大事だということですね。

さて、
今回は家づくりの知識の話ではなく、
マインド的な話をしたいと思います。
ぜひ参考にしてもらえたらと思います。
なんせ家は、人生を左右すると言っても過言ではない
とっても大きな買い物ですからね。

✔️時間の切り替え

まずやっていただきたいことが
「10-10-10分析」です。
その決断について
10分後にどう感じるのか?
10ヶ月後にどう感じるのか?
そして10年後にどう感じるのか?
という3つの時間枠で考えるということですね。

理由は、3つの時間枠で考えることによって
嫌でも自分の意思決定と
一定の距離を置くことが出来るからです。

どうやら人間という生き物は、
現在の感情がどんなに激しく強烈だとしても、
未来はあいまいに感じられることから、
現在と未来に食い違いがあると、
ついつい現在を重視し過ぎる傾向があるようなので、
この視点はそれを補正するために
欠かせないのではないでしょうか。

実際のシーンで考えてみると、
例えば間取りを考える時というのは、
現在の暮らしの問題を解決することに
フォーカスしてしまうのですが、
10年も経てば子供たちも成長し、
もしかしたら暮らし方や使い方が
今とは違っているかもしれませんよね。

また、予算的なことにおいても、
子供たちが小さいうちは、
子供たちにかかるお金が少なくて済むため、
現在にフォーカスし過ぎると、
安易に予算をアップさせてしまいがちになるのですが、
10年後は確実に子供たちにかかるお金も増えるし、
食費や旅費などの負担も大きくなるため、
それでも大丈夫なのかを考えておくことも大切です。
さらにそのすぐ先には大学への進学だって控えているし、
そもそも収入が増えているのかも
現時点では予想がつかないですしね。

そんなわけで、予算、土地、家という
全ての家づくりの意思決定において、
この分析を取り入れた方がいいと思っている次第です。
とりわけ10年後が家づくりでは大事なポイントかと思います。

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✔️視点の切り替え

続いてやっていただきたいことが、
「親友が同じような状況にいるとしたらなんとアドバイスするか?」
という客観的な見方です。

人は自分のことはよく分からなくても、
人のこととなれば細かなところまでよく見えるし、
色々と分かったりするものだからです。

自分のこととなれば、
一時的な感情に振り回されてしまうのが、
こと他人事となれば不思議なくらいにその一時的な感情を
脇に置いておくことが出来るからなんでしょうね。

結果、その決断において
最重要項目だけを自然と優先することが出来、
合理的で冷静な判断が出来るということのようです。
予算面に関しては、
この俯瞰的な見方が特に大切になってきそうですよね。

というわけで、これから家づくりをされる方は、
この2つの視点を持ちつつ
家づくりを進めていっていただければと思います。

途中で変更も修正も出来ない大きな買い物なので、
焦らず、盲目的にならず、俯瞰的な見方によって
合理的で正しい決断を行なってください。

それでは、また次回。
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